子どもの歯並びを見て、「もしかして受け口(反対咬合)かな?」と心配されている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。受け口は、見た目の問題だけでなく、放置すると発音や食事の仕方、顎の正常な成長に影響を及ぼすことがあります。
小児矯正では、成長途中の顎を活かしながら、早い段階で無理のない治療ができるのが特徴です。正しい時期に正しい治療を始めることで、将来的に永久歯の抜歯を回避できる可能性もあります。
今回は、子どもの受け口に対して小児矯正でできる治療法や治療開始の適切なタイミング、注意点などについて整理して解説します。
1. 子どもの受け口、いつから小児矯正に行くべき?
子どもの受け口は、見た目だけでなく、発音、噛み合わせ、顎の発育にも関わることのある歯並びの状態です。それでは、いつから矯正治療を検討するのが望ましいのでしょうか。
①乳歯列期(6歳頃)から相談は可能
受け口は、骨格的な問題(顎の位置関係)に由来するケースの場合もあり、早い段階での診断が大切になることがあります。6歳頃の「乳歯だけの時期」でも、小児歯科や矯正歯科で相談することは可能です。この時期に顎のズレや指しゃぶりなどの癖の有無を確認することで、予防的な指導や経過観察につなげることが可能です。
②小児矯正開始は6歳以降が目安
受け口に対する小児矯正(Ⅰ期治療)は、6歳臼歯が生えてくる6歳頃を目安に開始されることが一般的です。この時期は乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」であり、顎の成長を利用しながら噛み合わせの改善を目指すのに適していると考えられています。
③骨格的な要因の場合は早めの相談が重要
骨格に起因する受け口は、成長に伴って症状がより顕著になる傾向があるため、できるだけ早いタイミングでの相談が推奨されます。早期の矯正治療によって成長バランスを整えることで、抜歯や外科的処置のリスクを抑えられる可能性があります。
④治療開始前の早期受診には価値がある
すぐに治療を開始する段階でなかったとしても、定期的な診察で成長の様子を観察していくことで、最適なタイミングで治療を始められます。受け口が軽度の場合、生活習慣の指導や癖の改善だけで、状態に変化が見られることもあります。
受け口に関しては「様子を見る」より、まずは「専門家に相談する」ことが大切と言えるでしょう。
2. 小児矯正でできる受け口の治し方
小児の矯正(Ⅰ期治療)で受け口の改善に用いられる装置にはいくつかの種類があります。症例や年齢、成長段階に応じて使い分けられますが、それぞれに特徴と目的があります。
①ムーシールド(主に3〜6歳頃)
乳歯列期の受け口に使用されることがある、マウスピース型の装置です。日中や就寝時に使用し、舌の位置や口の周りの筋肉のバランスを整えることで、軽度の受け口の改善を目指します。歯や骨に強い力を加えるのではなく、お口の機能の調和を目的とした装置です。
②上顎前方牽引装置(フェイスマスクなど)
骨格的に上顎の成長が不足していると診断された場合に使用されることがあります。お顔の外に装着する装置で上顎を前方に成長するよう働きかけ、上下の顎のバランスを整えます。主に6〜10歳頃の混合歯列期に適応され、上顎の健やかな発育を促すことを目指します。
③拡大装置など
歯が並ぶスペースが足りない場合や、上顎の幅が狭いことが受け口の原因となっている場合、上顎の幅を広げる装置を用いることがあります。これにより歯が正しい位置に並びやすくなり、噛み合わせの改善につながる可能性があります。
④大人の矯正(Ⅱ期治療)への移行
Ⅰ期治療で骨格的な問題が改善された後、永久歯が生えそろった段階で、歯並びを整えるためのⅡ期治療(本格矯正)へ移行することがあります。ブラケットとワイヤーやマウスピース型の矯正装置を使った治療で、一本一本の歯の位置や最終的な噛み合わせを調整します。
骨格的な問題を改善出来なかった場合にはⅡ期治療は不可能になります。外科手術を伴う外科的矯正治療しか治療手段は無くなります。
⑤装置は症例に応じて組み合わせることも
一つの装置で治療が完了するとは限らず、子どもの成長段階に応じて装置を切り替えることもあります。受け口の原因が歯にあるのか、骨格にあるのかによっても装置の選択は変わる可能性があります。
装置の選択は、歯科医師が子どもの成長段階や顎のバランスを総合的に診断して決定します。焦らず、歯科医師と相談しながら治療を進めることが大切です。
3. 受け口の子どものための口腔ケアと生活習慣
受け口の治療期間中の口腔ケアは、矯正治療を円滑に進める上でとても重要です。矯正治療効果を高め、将来のトラブルを防ぐためにも、以下のポイントを押さえたケアが求められます。
①正しい歯磨きの習慣
矯正装置を装着している間は、装置の周りに汚れが溜まりやすくなります。歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシ(部分磨き用ブラシ)などを併用し、装置周りの清掃を丁寧に行うことが大切です。保護者の方による仕上げ磨きのサポートも重要となります。
②口呼吸から鼻呼吸への意識
口で呼吸する癖は、受け口やその他の歯並びの状態に影響を与えることがあります。日中や就寝時に口が開いていることに気づいたら、口を閉じるよう意識づけをしたり、必要に応じて耳鼻咽喉科を受診したりするのも一つの方法です。
③舌の癖への注意
舌の位置が通常より低い「低位舌」や、舌で前歯を押す癖は、受け口の要因となることがあります。歯科医院によっては、舌の正しい位置や動かし方を練習する「口腔筋機能療法(MFT)」の指導を受けられる場合もあります。
④顎の成長に影響を与える可能性のある癖の見直し
頬杖やうつ伏せ寝などの癖は、顎の正常な成長に影響を及ぼす可能性があります。成長期の子どもにとって、こうした無意識の習慣を見直すことが、治療を円滑に進めることにつながります。
⑤定期的な通院による経過観察
矯正治療は長期にわたることが多いため、計画に沿った定期的な通院が欠かせません。受け口の状態が見られたら早めに受診し、その後も継続的にチェックを受けることで、より良い治療結果を目指すことにつながるでしょう。
受け口の治療を成功に導くためには、装置だけに頼るのではなく、日々の口腔ケアと生活習慣の見直しが不可欠です。
家庭でのケアは、受け口を直接治すものではありませんが、治療の質を高める土台づくりとして重要でしょう。
4. 恵庭市の歯医者 ライオン歯科クリニックの小児矯正
恵庭市の歯医者 ライオン歯科クリニックでは、お子さん一人ひとりに合った矯正治療を行っています。初診時には検査を行い、お子さんの顎の成長や歯並びの状態に応じた治療方法をご案内しています。
小児矯正は成長期に合わせた対応が重要です。タイミングによって治療内容が異なる場合があるため、歯並びに関して気になることがあれば、早めの相談が望ましいでしょう。
治療方針により費用は変わることがあります。ご相談のうえ、各ご家庭の状況に合わせた治療法を検討しています。
目立ちにくさに配慮した矯正装置の使用にも取り組んでおり、帰宅後から使用できる装置を提案することもあります。取り外しが可能な「床矯正装置」をはじめ、必要に応じて奥歯に装着する固定式の装置も用います。また、顎の成長をコントロールする装置として、MPAやチンキャップ、ヘッドギアなどの取り外し式装置を使用することもあります。
矯正用マウスピースはさまざまなメーカーから提供されており、当院では国内の技工所で製作されるものを使用しています。透明で取り外し可能なため、使用中の見た目にも配慮されています。
永久歯が生えそろった方を対象としたマウスピース矯正では、状態に応じて治療を検討しています。
お子さん一人ひとりの成長や歯並びの状況をふまえながら、長期的な視点で矯正プランを立てていきます。
まとめ
子どもの受け口は、成長とともに状態が変化する可能性があるため、早期の相談が推奨されます。小児矯正では、子どもの成長段階を利用しながら、症状に応じた装置で噛み合わせの改善を目指すことができます。また、治療の効果を十分に引き出すためには、ご家庭での口腔ケアや生活習慣の見直しも大切になるでしょう。
恵庭市周辺で小児矯正による受け口の治療をご検討の方は、ライオン歯科クリニックまでご相談ください。
監修:ライオン歯科クリニック
歯科医師/院長 土肥和成